1007人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
だが魔封じの道具をつけられても、この美しい容姿は変わることがなかった。
どうせ魔法で容姿を変えているんだろうと高を括っていたバレリー夫人は「そんな……」と打ちひしがれた様子でその場に崩れ落ちる。
それ以降、夫人はますますヒステリックになり、夜な夜な伯爵と言い争うようになった。
「あのセレーナという子、本当に身に覚えがございませんの?」
「だから、ないと言っているだろう」
「だったら何故あんなに、ベアトリスに似ているんです!?」
「僕にも分からないよ。はぁ、もうやめよう。我々が口論しても仕方が無い。あの娘の件は、今こちらで検討しているから……」
「どうすると言うのです? 野放しにすれば、また貴方の隠し子だと騒ぎ立てるでしょう。いっそ、消してしまえば……ほら、そういう汚れ仕事を請け負う組織も……ありますでしょう?」
「おい! 馬鹿なことを言うな! 我がバレリー家は、非道な行いは絶対にしない!!」
「馬鹿、ですって? わたくしの気も知らないで……! もう貴方のことは信用できませんわ。勝手になさってくださいませ!!」
夫人は顔を歪ませ、夫の顔を見たくもないと言った様子で夫婦の寝室から出ていった。
それ以降、彼女は自分の部屋に引きこもり、心を病んでついに亡くなった。
最初のコメントを投稿しよう!