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バレリー夫人の死に、伯爵とベアトリスは深く悲しみ、屋敷全体が暗い雰囲気に包まれた。
だがセレーナは罪悪感など一切ない。
神殿では『聖女は悪しき心を持つと力を失う』と習ったが、悪事を働いてもセレーナの顔は美しいまま。夢のような不思議な魔法は解けない。
なぜ急に顔が変わったのか、身に宿るこの力がなんなのか、自分でも分からないのだ。
しかしひとつだけ言えることがある。
(わたしは、神に愛された特別な人間なのよ!)
☩ ☩ ☩
大広間の水鏡に映ったセレーナの過去に、人々はみな言葉を失っている。
しんと静まりかえった空間で、誰かの呟きがやけに大きく響き渡った。
「…………化け物だ」
それは、まさにセレーナという人間を端的に表した言葉だった。
ベアトリスは指を鳴らして水鏡を消し、意識を失っているセレーナを見下ろす。
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