4章:悪女の汚名返上いたします

36/50
1004人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
 バレリー夫人の死に、伯爵とベアトリスは深く悲しみ、屋敷全体が暗い雰囲気に包まれた。    だがセレーナは罪悪感など一切ない。  神殿では『聖女は悪しき心を持つと力を失う』と習ったが、悪事を働いてもセレーナの顔は美しいまま。夢のような不思議な魔法は解けない。  なぜ急に顔が変わったのか、身に宿るこの力がなんなのか、自分でも分からないのだ。  しかしひとつだけ言えることがある。   (わたしは、神に愛された特別な人間なのよ!)    ☩  ☩  ☩     大広間の水鏡に映ったセレーナの過去に、人々はみな言葉を失っている。    しんと静まりかえった空間で、誰かの呟きがやけに大きく響き渡った。 「…………化け物だ」  それは、まさにセレーナという人間を端的に表した言葉だった。  ベアトリスは指を鳴らして水鏡を消し、意識を失っているセレーナを見下ろす。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!