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凶悪な心と不可思議な力をあわせ持つ、自分とよく似た顔の──他人。
聖女の枠から外れたこの女はいったい、何者なのだろう。
パチンと扇を閉じる音が聞こえ、ベアトリスが視線を向けると、王妃がセレーナを睨み付けていた。
「その得体の知れない者の処遇については、陛下とよく話し合って決めねばなりません。沙汰を下すまで、共謀の騎士ともども厳重に牢へ繋いでおきなさい」
すぐさま騎士が数人かがりでセレーナとポールを取り囲み連行する。
「あぁ、セレーナ様……僕がずっとおそばにおりますからね。貴女は僕の女神……誰にも渡さない……」
恍惚と呟くポールには、初対面の時の人懐っこさは微塵もなかった。
☩ ☩ ☩
その後、ベアトリスは無事に無罪放免となった。
王室は、フェルナンの愚策とセレーナのおぞましい所業を隠すため箝口令を敷いたが、人の口に戸は立てられぬ。
情報は瞬く間に国内全土へ広まり、この一件は民も知るところとなった。
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