4章:悪女の汚名返上いたします

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 凶悪な心と不可思議な力をあわせ持つ、自分とよく似た顔の──他人。  聖女の枠から外れたこの女はいったい、何者なのだろう。  パチンと扇を閉じる音が聞こえ、ベアトリスが視線を向けると、王妃がセレーナを睨み付けていた。 「その得体の知れない者の処遇については、陛下とよく話し合って決めねばなりません。沙汰を下すまで、共謀の騎士ともども厳重に牢へ繋いでおきなさい」  すぐさま騎士が数人かがりでセレーナとポールを取り囲み連行する。 「あぁ、セレーナ様……僕がずっとおそばにおりますからね。貴女は僕の女神……誰にも渡さない……」  恍惚と呟くポールには、初対面の時の人懐っこさは微塵(みじん)もなかった。    ☩  ☩  ☩   その後、ベアトリスは無事に無罪放免となった。  王室は、フェルナンの愚策とセレーナのおぞましい所業を隠すため箝口令(かんこうれい)を敷いたが、人の口に戸は立てられぬ。  情報は瞬く間に国内全土へ広まり、この一件は民も知るところとなった。
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