4章:悪女の汚名返上いたします

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 ヘインズ公爵ら古参貴族を率いる新王太子アランと、それを打倒すべく動き出す王妃。  王城での権力闘争に人々が注目する中、かねてより決定されていたセレーナとポールの死刑が粛々(しゅくしゅく)と執行された。    ────表向きは。 「被検体Sの様子はどうだ」   「相変わらずだ。聖魔力と似て非なる禍々しい力を垂れ流しているよ」 「まるで、生きる呪具のようだな」   「おのおの、引き続き監視とデータ収集を進めてくれ」 「未確認の『力』については自分が分析いたします」 「ではこちらは、投薬の準備に移ろう」  白衣の学者たちは淡々と話した後、被検体に視線を戻す。 「この被検体に呼称をつけるとしたら、聖女の対極にある──【魔女】だな」    封印の拘束具で四肢を固定されたソレは、ガラス玉のような目でただ一点を見つめている。    地下深くの実験室では、魔法器具の作動音と学者がペンを走らせる音だけが響いていた。
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