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特別な力を持つ少女たちは、まず『見習い』として神殿に上がり、先輩聖女のもとで修行を積んだ後、さらに研修試験に合格することで一人前の『聖女』になれる。
試験先は実にさまざまで、孤児院への慰問活動の時もあれば、今回のように強制労働施設への見学実習のこともある。
「ほら、お役人に見つかったら没収されちまうよ。早く食べなさい」
ベアトリスは飴玉から視線をあげ、老人に懐疑的な眼差しを向けた。
(相手がどんなに人の良さそうな老人でも、所詮は犯罪者。油断してはダメよ)
つい先日、スパイに情報漏洩され、脱走計画を台無しにされたことで、ベアトリスは人一倍疑り深くなっていた。
「貴方の目的は、いったいなに?」
「目的? なんのことじゃろうか?」
「この世に無料より高いものはないわ。特に物資も乏しく、心に余裕のないこの場所ではね」
裏切り、窃盗、強奪。あらゆる犯罪が横行するこの労働所で、無条件で他者に優しくする人間なんていない。
ベアトリスはいざという時に対抗できるよう、密かに神聖力を身体中にみなぎらせた。
「答えて。なにが目的? 私の神聖力? それとも体?? だとしたら悪いけど、どちらも差し出すつもりはないわ!」
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