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警戒しながら問い詰めると、バッカスは一瞬きょとんとした後「あっははは!」と豪快に笑った。
「見返りなんて求めんから安心しなさい。それは、治療のお礼じゃ」
「お礼……ですって?」
「そうじゃよ。相手に何かをしてもらったら、きちんと感謝してお礼をする。当たり前のことじゃろう? 疑う気持ちは分かるが、恩を仇で返すようなことはせんよ」
(そう言われても、どう見ても怪しいし、信じた訳じゃないけれど……貴重なお菓子を突き返すのは、もったいないわね)
久々の甘味を前にして、警戒心より誘惑が勝った。
解毒の聖魔法の準備はできている。ベアトリスは、少しでも変な味がしたら吐き出そうと思いながら、試しに飴を口に放り込んだ。
瞬間、強烈な甘味が口いっぱいに広がり、唾液がじゅわっと出る。
(飴って、こんなにおいしかったかしら!)
久しぶりのお菓子に感激していると、バッカスが「そうかそうか、うまいか」と顔をほころばせた。
(この人……悪人じゃない?)
ニコニコとした人の良さそうな笑顔を見て、こんなに優しそうなお爺さんが何故ここにいるのだろうと、ベアトリスは不思議に思った。
「バッカスさん。あなた、なんの罪でここに入れられたの?」
「あぁ、わしは、違法な闇魔道具──いわゆる呪具の取引罪で捕まったんじゃよ」
「呪具! ……その話、詳しく聞かせて!」
呪具は、ベアトリスが追放されるきっかけになった代物。
ベアトリスは前のめりで尋ねた。
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