1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

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「特段おもしろい話でもないがのぉ。わしは元々、魔道具屋を営んでおったんだが、ある時、自分が特別な『鑑定眼』を持っていることに気付いたんじゃ。それ以来、楽に稼げる呪具販売に手を出しちまった」 「その、特別な『鑑定眼』ってなに?」 「呪具を判別できる目を、わしらの業界では『鑑定眼』と言うんじゃよ」  一般人が、普通の魔道具と呪具を見分けることは、至難の(わざ)だ。    特に呪いの少ない呪具であれば、発する瘴気も微量のため、専門家でも判別はほぼ不可能。  しかし、バッカスのような稀有な『鑑定眼』を持つ人間は、微弱な呪いや瘴気を見て取り、その魔道具が呪具か否かを判断できるらしい。 (きっとお母様の形見のネックレスは、微弱な呪いの呪具だったのね。だから、私を含め『鑑定眼』のない者たちは気付けなかった)    以前から、国内で呪具によるトラブルが相次いでいることはベアトリスも知っていた。  不法投棄された呪具から瘴気が漏れ出し、動植物が『魔物』という化け物に変異したり、環境汚染が進んで人が住めなくなったりするなど、社会問題化している。    瘴気浄化の仕事をしたこともあるベアトリスだったが、呪具については詳しくはなかった。というか、無関心だったのだ。    なぜなら、神殿では「聖女たるもの闇の魔法には触れるべからず」と教えられたため、知ろうとしなかったから。   (でもそれじゃあ、ダメ。自分の身は自分で守らないと。無知は死に直結する)  
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