1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

13/54
前へ
/230ページ
次へ
「バッカス、呪具についてもっと詳しく教えて」   「あぁ、いいとも。さて、なにが知りたい?」 「まずは、呪具の効果について」 「うむ、込められた呪いの程度によって変わるゆえ、一概には言えんが……。微弱な呪いであれば、他人の気力や体力を奪うくらいで済むが、強力なものであれば、洗脳したり呪い殺したりもできるらしい」    呪殺までできるなんて……と、ベアトリスは身震いをした。 「暗殺呪具は、対象者の近くに置くだけで呪い殺せる、便利な代物じゃ。だが目的を達する前に壊された場合、力はすべて、怨念を込めた者に跳ね返り、死に至るという。いわゆる呪い返しじゃ。わしは噂でしか聞いたことがないがの」    バッカスが売っていたのは、運気が下がったり、腹を下しやすくなったりする程度の呪具もどきで、強力な暗殺呪具などは見たこともないらしい。 「子供だましの代物を売って小銭を稼いでいたんじゃ」と、彼は肩をすくめた。 「本物の呪具じゃなくて、まがい物を売っていただけで強制労働刑なんて、厳しすぎないかしら」と、ベアトリスは思わず眉をひそめてしまう。    しかしバッカスは諦めた顔で「もういいんじゃよ」と言った。 「見てのとおり、こんな老いぼれじゃ。人生やり直そうにも時間がないし、ここにいれば最低限の衣食住は保証されておる。仕事は大変だが、まぁ、住めば都というもんで、ここの暮らしも案外良いもんじゃよ」  
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1038人が本棚に入れています
本棚に追加