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バッカスに励まされ、沈んでいた気持ちが浮上した。
(そうよ、私はまだまだやれる。人生挽回するために、次の一手を考えましょう)
ベアトリスは、さっき食べた飴玉の甘さを思い出しながら、晴れやかな気持ちで「やるぞ!」と決意を新たにするのだった。
✻ ✻ ✻
(脱走がダメとなると、正攻法でここを出なければいけないわね。やっぱり模範囚になって減刑を狙う方向で……)
今後について思案しつつ洗濯をしていると、ふと視線を感じた。
顔を上げて見れば、純白のローブを着た少女たちが、こちらを見ながらクスクス笑って近づいてくる。
おそらく研修に来ている聖女見習いだろう。
少女のひとりが「お久しぶりですね、ベアトリス様」と声をかけてきた。
「もしかして、わたしたちの顔、忘れちゃいました? ひどいなぁ。わたしは貴女にいびられたこと、ずっと忘れられずにいたのに」
ベアトリスはしばらく考え……ようやく少女たちのことを思い出した。
「貴女たちは……」
目の前に立つ少女らは、かつてベアトリスの元で修行をしていた聖女見習いたちだった。
「お久しぶり、すぐに気付かなくてごめんなさい。でも私、貴女たちを虐めた覚えはないけれど?」
問いかけると、見習いのひとりが恨みがましく睨み付けてきた。
「虐めた覚えはない、ですって? ハッ! わたしに『貴女には聖女の資格がない』って言って、昇級試験を不合格にしたじゃないですか!」
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