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たしかに、ベアトリスはかつて彼女に不合格を言い渡した。
だが、それには歴とした理由がある。
孤児院での慰問を兼ねた研修試験の際、彼女たちは「やだ汚い、触りたくないわ。変な病気をもらったら困るもの」と、子供に平然と言ってのけたのだ。
試験官をしていたベアトリスは偶然それを聞いてしまい、彼女たちの人物評価を大幅に減点した。
「貴女のせいで、わたしたちは聖女になれず、今も見習いのまま。あの時の屈辱は絶対に忘れない」
(試験に落ちたのは自業自得でしょう。私を恨むのはお門違いだわ)
──というベアトリスの言葉は、少女たちの突然の暴挙により遮られた。
彼女たちは、物干し竿にかけられていた洗濯物を掴むと、勢いよく地面に叩きつけ楽しそうに踏みつける。
苦労して洗ったばかりの衣服がどんどんと泥にまみれていく……。
ベアトリスはたまらず「やめなさい!」と叫んだ。
すると少女たちがぴたりと足踏みを止め、蔑むような視線を向けてくる。
「やめなさい? 奴隷の貴女にそんなこと言う資格ないわ。聖女になれず、わたしたちがどれほど屈辱的な日々を過ごしているか、今日はたっぷりと思い知らせてあげる」
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