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「さっきからピーチクパーチクうるさいのよ。ナンパは外でやってくださる? 迷惑だわ」
ハッキリ苦情を言うと、騎士は明らかに気分を害したようで、眉間にしわを寄せた。
(やだ、言い過ぎた? あぁ、私ってばどうしていつも、こういう言い方しかできないのかしら)
そう気付いて後悔するのは、いつも言ってしまってから……。
こちらの様子を窺っていた侍女がいそいそと部屋を出ていくのが見えた。
室内がシーンと静まり返り、気まずい雰囲気が漂う。
すると、ほどなくして、先ほど退室した侍女が、ひとりの騎士を引き連れて戻ってきた。
「ベアトリス様、おおかたの事情は聞きました。副団長として、部下の非礼をお詫びいたします」
丁寧な口調でそう述べ優雅に頭を下げたのは、艶やかな黒髪に、海を思わせる群青色の瞳の美青年。
近衛騎士のユーリス・ブレア副団長だった。
胸に手を当て、細身の長身を折り曲げ軽くお辞儀した彼は「ですが──」と言葉を続けた。
「いつも申し上げておりますが、ベアトリス様の言い方にも少々問題があるかと」
「…………私が悪いと言うの?」
自分の毒舌癖は自覚しているが、ベアトリスとて多忙な身。
(たしかに言い方はキツかったと反省しているわ。でも私だって余裕がないのよ。ヘラヘラ雑談して怠ける騎士に『聖女』の私が、いちいち優しく注意してあげる義理はないわ)
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