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ニヤッと笑った少女が近くにあったバケツを持ち、中に入っていた冷水を思いっきりベアトリスに向かって浴びせかけた。
全身ずぶ濡れになった姿を見て、全員揃ってケラケラ笑い出す。
「ふふっ、あはは。ちょっとぉ、さすがにそれはかわいそうじゃないかしら? うふふっ」
「そう? でも、大丈夫よ。元聖女なら、浄化の魔法で身綺麗に出来るでしょう?」
「あら、知らないの? この女はね、セレーナ様の力を盗んで聖女になった偽物なのよ。浄化の聖魔法なんて高等術、使える訳がないじゃない」
あまりの屈辱にベアトリスは怒りに震えながら、ぐっしょり濡れた金髪をかき上げた。
彼女たちの言うとおり高等術は無理だが、今でも火の玉を作るくらいの初級術なら使える。
(あぁん? その白くてお綺麗なローブごと、全身火だるまにしてやろうかぁ?)
罵詈雑言の数々が喉まで出かかったが、さすがに暴力と暴言はダメだと思いグッとこらえる。
(囚人に囲まれて暮らしているせいで、すっかりガラの悪い言葉を覚えてしまったわ。気をつけなきゃ)
今ここでやり合っても不利益を被るのは自分。神殿の人間に危害を加えた罪で、また刑期が延びるのは絶対に避けたい。
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