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ユーリスが切れ長の目をすっと細めて問い詰めれば、少女たちは動揺して視線を泳がせた。
「自身の過ちを素直に認めた方が、減点はまだ少ないと思いますよ」
ユーリスの言う通り、この研修は見習いにとって、聖女に昇級するための重要な試験のひとつ。
査定でマイナス評価になれば、不合格の確率は格段に高まる。
「わ、わたしは悪くないわ! この子が、ベアトリスを虐めてやろうって言い出したのよ」
「はぁ!? わたしのせいにしないでよ! 洗濯物を泥だらけにしたのは貴女じゃない!」
「そ、それを言うなら、水をかけて暴力を振るった方が悪いじゃない!」
ひとりを皮切りに、少女たちが責任の押し付け合いを始める。
しばらく様子を眺めていたユーリスは、ふぅと溜息をつき手を叩いた。
突如として響いたパンパンッ──という音に、彼女らがハッと我に返る。
「貴女たちの教官がお待ちです。弁明は、そちらでどうぞ」
「ああ……落ちた……まちがいなく……おちた……」
少女たちは騎士に連れられ、この世の終わりのように項垂れて、とぼとぼと去っていった。
取り残されたベアトリスは、地面に座ったまま呆然とする。
(もしかして、ユーリスは私を庇ってくれたの? え、どうして? というか、なんでここに?)
聞きたいことは山ほどあるが……。
結局、ベアトリスの口から発されたのは「へくちゅん!」という、なんとも間抜けなくしゃみだった。
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