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恥ずかしさで真っ赤になりながら、濡れた自分の体を見下ろしてぶるりと震える。
そうだった。全身びしょ濡れなんだった。
「うう、さ、さむいぃ……」
思わずそう呟けば、ユーリスは「仕方ない」といった様子で、上着を脱いでベアトリスの肩にかけてくれる。
「あ、ありがとう、ユーリス」
「…………え」
ただお礼を言っただけなのに、ユーリスはひどく驚いたように目を見開き固まった。
「…………い、いま、なんと?」
「え? ありがとう。助けてくれて、あと上着も貸してくれてありがとう。これ、洗って返すわね」
至って普通のことを言っているはずなのに、ベアトリスが喋るたび、ユーリスの顔つきがますます険しくなっていく。
「素直に感謝するなんて、信じられない……貴女、本当にあの性格のきっついベアトリス様ですか?」
「はあ? それ以外の誰に見えるって言うのよ。というか、今サラッと悪口言ったわね」
「ああ、その高飛車な喋り方、間違いありませんね」
「ちょっと! 判断するところがおかしいじゃない! というか、貴方どうして、ここに……はぅ、はくちゅっ、くちゅん! うっ、ううぅ……」
ぶるぶる震えるベアトリスを見下ろして、ユーリスが「説明はあとで」と歩き出した。数歩進んで、ぴたりと足を止め、こちらを振り返る。
「なにしているんです? 風邪を引きますよ、ついてきなさい」
彼はベアトリスの返事も待たずに再び歩き出す。
(はぁ!? 高飛車なのはそっちじゃない!)
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