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ベアトリスは心の中で不満をこぼしながら、それでも大人しくついて行くのだった。
✻ ✻ ✻
案内されたのは、役人たちが寝泊まりする宿舎だった。
掘っ建て小屋のような囚人用の施設とは異なり、設備も整っており温かい。
ユーリスは廊下を進み二階に上がると、『来客室』と書かれた部屋の鍵を開け中に入った。
「どうぞ」
「失礼します……」
てっきり取り調べ室に連行されるかと思いきや、そこは暖炉に火が灯った立派な客間だった。
「え、これどういう状況? 私、さっきの件の事情聴取、というか尋問されると思って覚悟していたんだけど」
「尋問? そんな事しませんよ。それとも、なにか尋問されるような後ろ暗いことでもあるんですか」
王都に戻って復讐するため、救護室の備品窃盗犯を見逃したあげく、一緒になって脱獄計画を実行しようとしました!
……とは、口が裂けても言えない。
「ま、まっさかぁ~。後ろ暗いことなんてナイナイ! ひとつもないわ! あははは……」
「驚くほど嘘が下手ですね。俺がなにも知らないとでも?」
「ギクッ」
「まぁ、いい。今回だけは見逃します。貴女に、していただきたい事があるので」
「していただきたいこと?」
首を傾げるベアトリスに、ユーリスは隣室を指さして言った。
「あちらが浴室です。まずは風呂に入ってきてください。話はそれからです」
「へっ?」
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