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この王国には古来より、特別な力を宿した女性──『聖女』が現れる。
神殿に所属する聖女は丁重な扱いを受けるが、決して贅沢や怠惰が許される立場ではない。
慢性的な人手不足により仕事量は膨大。おまけに第一王子の婚約者であるベアトリスはさらに多忙を極めていた。
そんな中、今夜は婚約者のフェルナン王子との夕食会。
約束の時間が迫っているため、一刻も早く雑務を終わらせたいのに、騎士の雑談のせいで集中力を削がれ、とても迷惑だったのだ。
(私だって精一杯頑張っている……なのに全然、うまくいかない)
ベアトリスは毎日、ろくに休みもせず激務をこなしている。
しかし周囲は、さもそれが当然かのように思っているようだった。
その一方で、他の聖女は些細なことで褒められたり、気遣われたりしている。
『あの聖女様は、いつも健気で頑張り屋だよな。それに比べて、うちのベアトリス様は……』
『あそこの聖女様も、どんなに忙しくても部下にお優しくていらっしゃる。それに比べて……』
──そんな陰口を聞くたび、ベアトリスは自身のかわいげのなさを痛感した。
(分かってる。仕事を頑張るだけじゃダメなのよ。もっと人付き合いも上手になって、自分の頑張りを周囲にアピールしなきゃ、誰も認めてくれない……。私は人徳とコミュニケーションスキルが足りないんだわ)
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