1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

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 ベアトリスに睨まれていたのは、侍女の制服を身につけた気弱そうな赤毛の少女だった。  瞳の色はブレア伯爵と同じ青色、顔立ちもどことなく似ている。  ベアトリスが目をつり上げて、侍女に詰め寄った。 「どうしてセレーナがここにいるの?」 「あの……わたし……お墓に、お花を……」 「お花? お母様は、アンタの献花なんて望んでいないわ! しかもその花、マリーゴールドよね。よりによって、お母様が一番嫌いだった花」 「えっ? そ、そうなんですか……? すみません……わたし、知らなくて……ごめんなさい」 「嘘っ! 知らないはずない。だって、『マリーゴールドには【嫉妬】と【絶望】っていう意味があるから飾らないで』って、お母様はみんなに言っていたもの」  怒りで頬を染め上げたベアトリスは、まるで親の仇のようにセレーナを睨みつけた。 「貴女、わざとやっているでしょう! 死んだ後もお母様を苦しめるつもり!?」 「そんな……わたしは、奥様のご冥福を……」 「うるさい! 白々しい嘘はやめてよ!!」  言葉を遮ってベアトリスが叫び、右手を振り上げた。  逃げようとしたセレーナだったが、足がもつれ「きゃっ」と小さな悲鳴をあげて地面に倒れ込む。
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