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ベアトリスに睨まれていたのは、侍女の制服を身につけた気弱そうな赤毛の少女だった。
瞳の色はブレア伯爵と同じ青色、顔立ちもどことなく似ている。
ベアトリスが目をつり上げて、侍女に詰め寄った。
「どうしてセレーナがここにいるの?」
「あの……わたし……お墓に、お花を……」
「お花? お母様は、アンタの献花なんて望んでいないわ! しかもその花、マリーゴールドよね。よりによって、お母様が一番嫌いだった花」
「えっ? そ、そうなんですか……? すみません……わたし、知らなくて……ごめんなさい」
「嘘っ! 知らないはずない。だって、『マリーゴールドには【嫉妬】と【絶望】っていう意味があるから飾らないで』って、お母様はみんなに言っていたもの」
怒りで頬を染め上げたベアトリスは、まるで親の仇のようにセレーナを睨みつけた。
「貴女、わざとやっているでしょう! 死んだ後もお母様を苦しめるつもり!?」
「そんな……わたしは、奥様のご冥福を……」
「うるさい! 白々しい嘘はやめてよ!!」
言葉を遮ってベアトリスが叫び、右手を振り上げた。
逃げようとしたセレーナだったが、足がもつれ「きゃっ」と小さな悲鳴をあげて地面に倒れ込む。
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