1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

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「俺は誰の味方でもありませんよ。ただ、どんな事情があれ、暴力はいけない」  喧嘩の仲裁に入ったつもりだったが、ベアトリスは完全にユーリスを敵と見なしたようだ。敵愾心(てきがいしん)も露わに怒りの表情を浮かべている。  セレーナが怯えてユーリスの背中にさっと隠れた。  それを見て、ベアトリスが大きな瞳をますます吊り上げる。   「雨が強くなってきました。ふたりとも早く屋内へ。ベアトリス嬢、これを」  ユーリスは努めて優しく微笑み、ベアトリスに傘を差し掛ける。  だが、彼女はその手を思いっきりはねのけた。  パシンという乾いた音とともに、ぬかるんだ地面に傘が落ちる。 「ぁ……」  自分でも『やりすぎた』と思ったのか、ベアトリスは一瞬狼狽えたものの、次の瞬間にはユーリスから視線を外し、くるりと背を向けた。 「結構よ。セレーナに貸してあげれば」  そう言い捨てて、雨の中を走り去ってしまった。    それから、彼女と会う機会はなかったが、偶然の産物か、はたまた運命のいたずらか。  ふたりは神殿で、聖女と護衛騎士という形で再会を果たすこととなった。  そして皮肉なことに、ベアトリスの隣には相も変わらずセレーナがいる。  
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