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ベアトリスは未だに、ユーリスがセレーナの味方だと決めつけているようで、再会後もまったく心を開いてくれなかった。
会えば気まずそうに顔を背け、口を開けば皮肉交じりのセリフを言い放つ。
(俺は、相当嫌われているんだな)
そう思っていたが、当たりが強いのはユーリスに対してだけではなかった。
「ベアトリス様って、上級聖女様で、しかも王太子殿下の婚約者だろう? 気安く話しかけられないよ」
「そうそう、しかも圧がすごくて。ただでさえとっつきにくいのに、あのかわいげのない言動……怖いわ」
「セレーナさんって、いつもベアトリス様に怒られているじゃない? 本当にかわいそう。同情しちゃうわ」
優秀だが気位が高いベアトリスは、高飛車な口調や無愛想な言動も相まって、神殿内で完全に孤立していた。
お節介だと思いつつも、口調に気をつけるようユーリスが忠告すれば、彼女はますます頑固になり溝は深まるばかり。
結局、関係は修復されぬまま、王室の決定によりベアトリスは追放され、今に至る──。
浴室の扉がガチャリと開き、ベアトリスが居間に戻ってきた。
物思いにふけっていたユーリスは現実に引き戻され、振り返る。
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