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先ほどまで、冷えて血の気を失っていたベアトリスの顔は、血行が良くなって頬が薄紅に色づいていた。
案の上、ユーリスの私服は彼女には大きすぎて、袖と裾を折ってもまだぶかぶかだ。
元から華奢だったが、追放されてからは更に痩せてしまったようで、手首や足首は折れそうなほど細い。
痛ましい気持ちになったユーリスは、そっと彼女から視線をそらしてカップにお茶を注いだ。
「どうぞ」
「ん~、いい香り」
湯気の立つ温かな紅茶に、ベアトリスが嬉しそうにカップに口を付ける。
「とってもおいしい。お風呂と着替え、ありがとう。体の芯から温まったわ。こんなの久しぶり」
「どう、いたしまして……」
ユーリスの知っているベアトリスは、とにかく強気で苛烈で毒舌。サボテンかハリネズミのごとく、触れた者を傷つけるような刺々しい女性だ。
だから今日も『許さない! 復讐してやる!!』と、わめき散らされるのを覚悟していたが……。
(なんだ、このふわふわした表情は……)
かつての尖った雰囲気は鳴りを潜め、目の前のベアトリスはふんわりと可憐に微笑んでいる。
今の彼女の見た目や仕草は、悪女とはほど遠い……。
年相応の無邪気で明るい少女だ。
すっかり毒気を抜かれてしまったユーリスは、信じられない気持ちで笑顔のベアトリスを見つめた。
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