1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

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 先ほどまで、冷えて血の気を失っていたベアトリスの顔は、血行が良くなって頬が薄紅に色づいていた。  案の上、ユーリスの私服は彼女には大きすぎて、袖と裾を折ってもまだぶかぶかだ。  元から華奢だったが、追放されてからは更に痩せてしまったようで、手首や足首は折れそうなほど細い。  痛ましい気持ちになったユーリスは、そっと彼女から視線をそらしてカップにお茶を注いだ。 「どうぞ」 「ん~、いい香り」  湯気の立つ温かな紅茶に、ベアトリスが嬉しそうにカップに口を付ける。 「とってもおいしい。お風呂と着替え、ありがとう。体の芯から温まったわ。こんなの久しぶり」 「どう、いたしまして……」  ユーリスの知っているベアトリスは、とにかく強気で苛烈で毒舌。サボテンかハリネズミのごとく、触れた者を傷つけるような刺々しい女性だ。  だから今日も『許さない! 復讐してやる!!』と、わめき散らされるのを覚悟していたが……。 (なんだ、このふわふわした表情は……)  かつての尖った雰囲気は鳴りを潜め、目の前のベアトリスはふんわりと可憐に微笑んでいる。  今の彼女の見た目や仕草は、悪女とはほど遠い……。  年相応の無邪気で明るい少女だ。    すっかり毒気を抜かれてしまったユーリスは、信じられない気持ちで笑顔のベアトリスを見つめた。
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