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もっと世渡り上手にならなければと日々反省しているが、そう簡単には変われない。
あいにくとベアトリスは口下手な上に、他人に弱みを見せられない不器用な性格だった。
今も、かわいらしい弱音のかわりに、まったくかわいくない皮肉が口から飛び出す。
「はぁ、分かった、私の言い方が悪かったわ。……でも、肩を揉むくらい大した労力もないでしょうに。騎士の筋肉は、お飾りかしら?」
言ってしまってから『あぁ、またやっちゃった……』と後悔するも、もはや遅い。
ユーリスはなにも言わず、呆れた冷ややかな視線を向けてくる。他の騎士や侍女も同様。
口には出さないが、彼らの『ベアトリス様って、かわいくないよね』という心の声が聞こえてくるようだった。
(うぅ……私って、本当に話すのが下手くそだわ……)
室内に気まずい空気が漂う。
そこにスッと飲み物が置かれたので、ベアトリスはコホンと咳払いしてカップを手に取った。
お茶で口を潤し、心を穏やかにしてから、みなにきちんと謝りましょう。
そう思っていたのに……とんでもなく熱い紅茶に思わず「あっつ!!」と叫び、盛大に顔をしかめた。
「なっ、なにこれ?! すごく熱いじゃない! 淹れたの誰よ!」
キッと睨み付ければ、熱湯紅茶を淹れた犯人は身を縮こませて、うるうると目に涙を浮かべる。
「ぁっ……わたし、です……」
案の上、怯えた表情でそう名乗り出たのは、ベアトリスの側仕えを務める異母姉のセレーナだった。
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