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「貴女に罵倒され、『復讐してやる』と言われるのを覚悟しておりました」
「実はね。正直に言うと、少し前まではそう思っていたわ。私はなにも悪くないのに、どうしてこんな目に遭うのって、嘆いて怒って。私を陥れた人間と、味方してくれなかった人たち全員に、絶対復讐してやると誓った。でも……もう疲れちゃった!」
「疲れた、とは?」
「他人を恨んで怒り続けるのって、実はすごく疲れるのよ。胸にドロドロした感情がたまって、自分が醜くなっていくような気がするの。それに、さっきの見習い聖女たちを見て改めて思い知った」
ベアトリスは、先ほどの光景を思い出しながら言った。
「復讐は自分に跳ね返る」
憎しみの感情のまま、暴言を吐き、暴力を振るった見習い聖女たち。
歪んだ正義を振りかざし、嬉々として復讐を果たした彼女たちが最終的に得たものは──不合格という悲惨な末路。
彼女たちを見て、復讐に取り憑かれる恐ろしさを痛感した。
自分はあんな風にはなりたくないと強く思う。
「私は無実よ。だけど復讐してもきっと、私は幸せにはなれない。だから、考えを改めました」
「どのように?」
「直接的な報復はしない。だけど泣き寝入りする気もないわ。私は悪女の汚名を返上して、幸せになる。絶対に、人生をやり直してみせる──!」
追放されるきっかけになった事件の真相究明と、平穏な日常の回復。そして自身と父の名誉挽回。
これこそが、ベアトリスの新たな生きる目標。
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