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晴れやかに告げると、ユーリスはうつむいて小さく呟いた。
「……ひとは、そう簡単には変われませんよ」
「え?」
「いいえ、なんでも」
そう言って首を横に振る彼は、いつも通り冷静沈着でクールな表情だ。
(聞き取れなかったけど、今なんて言ったのかしら? それに、なんだか暗い表情だったような……。そういえば、私、ユーリスについてなにも知らないわ)
「それで、貴女には王都に……って、ベアトリス様? 聞いていますか」
「えっ? あっ、なに? ぼーっとしちゃった、ごめんなさい、もう一度言って」
「ですから、俺が今回ここに来た理由ですが」
そう言って、ユーリスが改めて話し始めたその時──。
ドォンッという地鳴りとともに、突き上げられるような激しい揺れに襲われた。
「きゃっ、なに!?」
テーブルから茶器が滑り落ちて割れ、戸棚や本棚もぐらぐらと大きく揺れている。
とっさにユーリスが庇うようにベアトリスを抱きしめた。
「と、止まった……?」
しばらくしてから、ようやく地震が収まった。
「ええ、そのようです。激しい揺れだったので、鉱山で落盤など起らないと良いのですが」
「鉱山……」
次の瞬間、ベアトリスはハッとして勢いよく立ち上がった。
「ベアトリス様?」
「バッカスが……知り合いが、今日は深層部で採石するって言っていて……私、行かなきゃ!」
「待ってくださ──」
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