1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

39/54
前へ
/230ページ
次へ
 ユーリスの制止にも構わず、ベアトリスは身体強化の聖魔法を使って疾風(はやて)のごとく駆けだした。 「くそっ! あのお転婆め!」  背後からそんな声が聞こえてきたが、立ち止まる余裕はなかった。  ✻  ✻  ✻    ベアトリスが採掘現場の入り口に駆けつけると、そこは人でごった返していた。  人波をかき分けて進みながら、周囲の飛び交う怒号や話し声に耳をそばだてる。 「第一鉱山の方で落盤事故が起きた! 手があいている奴は来てくれ!」 (第一鉱山……バッカスが採掘に行った場所だわ!)  急いで向かうと、坑道の入り口に山のような人だかりが出来ている。  群衆の隙間から様子を窺うと、聖女見習いたちが、囚人たちと口論を繰り広げていた。 「だから、中に取り残されてる奴らがいるんだよ。どうか助けてやってくれ! なあ、頼むよ、聖女サマ!」 「嫌よ! 落盤事故が起きたんでしょう? 危険だわ」 「あんたら、それでも聖女かよ!」 「そうだ、そうだ! ひとを助けるのが聖女の仕事だろ!」  ベアトリスを虐めた例の聖女見習いが「アハハッ」と嘲笑(ちょうしょう)し、囚人たちをキッと睨み付けて言った。 「わたしの仕事はねぇ、まっとうな人間を救うことよ。貴方たちのような社会のゴミ、どうなろうと知らないわ」 「なん……だって……?」  聖女らしからぬ非情な言い草に、囚人たちは絶句し、怒りで顔を真っ赤に染め上げる。 (あの子、また人を見下して。ぜんぜん反省していないのね)
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1040人が本棚に入れています
本棚に追加