1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

40/54
前へ
/230ページ
次へ
 このままでは、囚人たちが暴動を起こしかねない。そうなれば現場はさらに混乱し、取り残された者の救助はおろか、怪我人の手当もままならなくなる。  まさに一触即発の状況に、ベアトリスは急いで見習いと囚人の間に割って入った。 「あっ、姉御っ!」 「坑道に取り残されているのは、何人?」 「バッカスの爺さんひとりだけっす。他の若い連中は自力でなんとか脱出できやした!」 「分かったわ。バッカスは私が助けに行くから、みんなは怪我人の搬送をお願い」 「いくら姉御でも、ひとりで行くなんて無謀っすよ! 俺らも一緒に」  囚人(なかま)の申し出に、ベアトリスは首を横に振った。 「いつまた地震が起るか分からない。私は聖魔法で対処できるけど、貴方たちまで守る自信はないわ」 「わ、分かりやした。バッカスのことは姉御に頼んだ! 俺たちは怪我人を救護室へ運びやす」 「任せたわよ」  ベアトリスは力強く言うと、意識を集中させて自身の周りに薄い魔力の防御壁を張った。  それだけで、神聖力がごっそり削がれていく気がする。  正直、こんな薄皮一枚程度のバリアで、崩落から身を守れるとは思えない。  最悪、生き埋めになって命を落とすかも……。 (いいえ、怯えている暇はないわ。待っててね、バッカス。今行くから──!)  
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1040人が本棚に入れています
本棚に追加