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このままでは、囚人たちが暴動を起こしかねない。そうなれば現場はさらに混乱し、取り残された者の救助はおろか、怪我人の手当もままならなくなる。
まさに一触即発の状況に、ベアトリスは急いで見習いと囚人の間に割って入った。
「あっ、姉御っ!」
「坑道に取り残されているのは、何人?」
「バッカスの爺さんひとりだけっす。他の若い連中は自力でなんとか脱出できやした!」
「分かったわ。バッカスは私が助けに行くから、みんなは怪我人の搬送をお願い」
「いくら姉御でも、ひとりで行くなんて無謀っすよ! 俺らも一緒に」
囚人の申し出に、ベアトリスは首を横に振った。
「いつまた地震が起るか分からない。私は聖魔法で対処できるけど、貴方たちまで守る自信はないわ」
「わ、分かりやした。バッカスのことは姉御に頼んだ! 俺たちは怪我人を救護室へ運びやす」
「任せたわよ」
ベアトリスは力強く言うと、意識を集中させて自身の周りに薄い魔力の防御壁を張った。
それだけで、神聖力がごっそり削がれていく気がする。
正直、こんな薄皮一枚程度のバリアで、崩落から身を守れるとは思えない。
最悪、生き埋めになって命を落とすかも……。
(いいえ、怯えている暇はないわ。待っててね、バッカス。今行くから──!)
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