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「私、前回も前々回も言ったわよね。お茶の温度はちゃんと確認してって。こんな煮え湯を飲まされたら、火傷するじゃない! 相手が私だったから許されるけど、こんな物を他の方にお出ししたら大変なことになるわ!」
「すっ、すみ、ません……」
「謝らなくていいから。同じミスをしないように、よく考えて慎重に行動して」
「ああ……お茶すらも、満足に淹れられず……ごめんなさ、ぃ……」
「いや、だから、もう泣かなくていいから」
火傷するほどの熱湯に驚きはしたものの、それほど強く言ったつもりはなかったのに、セレーナは身体を震わせて号泣してしまった。
いつもそうだ。ベアトリスは建設的な話し合いがしたいのに、義姉が泣き出してしまうから会話にすらならない。
周囲は『ほら、また虐めて泣かせてるよ』と小声で囁き、セレーナに同情の眼差しを、ベアトリスには非難の陰口を向けてくる。
(……私は、いっつも悪者ね)
グスグスと鼻をすすり、いつまでも泣き続けるセレーナを見て、ベアトリスは『こっちが泣きたい気分だわ』と痛むこめかみを押さえた。
「あのね、セレーナ。子供じゃないんだから、小さなことでいちいち泣かないでって、いつも言っているわよね?」
「ええ、ごめん……なさい……」
「これじゃあ、私が虐めているみたいじゃない」
「……うぅっ……すみ、ません……」
「はぁ。もういい、疲れたわ。みなさん出て行ってちょうだい」
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