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『アンタがうちに来なければ、お母様は死ななかった! この疫病神!!』
ベアトリスは、母を失った悲しみと怒りをすべてセレーナにぶつけ、罵倒して虐げた。
しかし、異母姉を怒鳴りつけながらも、頭の片隅では分かっていた。
──セレーナに怒りをぶつけても、お母様は帰ってこない。こんな八つ当たりは無意味だわ。
十四歳で聖女の力に目覚め、神殿行きを告げられた時、正直ほっとした。
これでセレーナの顔を見なくても済む。屋敷を離れて一旦、冷静になろう……と思っていたのに。
ところがなんとセレーナにも聖女の素質があったらしく……。
十七歳になった今もベアトリスとセレーナは、聖女と聖女見習いとして共にいる。
(ほんと、恐ろしいほどの悪縁だわ)
さすがに十七にもなれば、ベアトリスも表だってセレーナを罵倒したりはしないが、先ほどのように悲劇のヒロインぶって泣きじゃくられると、積年の恨みもあって苛立ちが抑えられなくなる。
(私、ああいうメソメソ、ウジウジしている人って嫌い。泣けば許されると思っているのかしら。しらじらしくて見ているだけでムカつくわ。……って、こういう考えだから、周りに愛されないのよね)
これからはもう少し、笑顔を心がけてみよう。
身支度を整えたベアトリスは、鏡の前でニコッと口角を上げる練習をして、部屋を出た。
しかしその日の夕食会にて──。
笑顔の練習もむなしく、ベアトリスは婚約者のありえない宣言に、愕然とした表情を浮かべることとなる。
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