156人が本棚に入れています
本棚に追加
すうっと息を吸い込む。
誰かになにかを言う時は緊張する。でも、その緊張よりもこの場所にいたくない気持ちのほうが勝っていた。
「あのね、モデルはモデルができるような容姿と立ち振る舞いと気持ちが必要なの。わたしみたいなのにできるわけないじゃない。歩くだけ、でも、そこに班の努力をぜんぶ注ぎ込むんでしょ?そんな大役、わたしなんかに務まるわけないでしょ」
人間にはできることとできないことがある。それは人それぞれ違って、自分にできないことが誰かの得意なことだったりする。反対もあるかもしれない。
この人は天才だって言われるほどの才能を持っている。ついでに恵まれた容姿背格好も持っている。
でもわたしには到底そんなものはないのだ。
この人が自分に自信を持っていることはわかる。だから大きな態度をとれるし、こうやって人のこと勝手にどうにかしようともする。
「誰もが自分みたいに生きてるなんて思ったら大間違いなんだからね」
これだけ拒否すれば、自分の思考回路がおかしかったと思うだろう。
わたしをショーモデルにするって?ジミーちゃんだよ?下の中だよ?ありえなかったわーってなるでしょ。
そしたら帰れる。もう、このすごい才能を持ってる人たちが集まっているプロデュース科の人たちに注目されている今の現状に耐えられないから一秒でも早く手を放してほしい。
最初のコメントを投稿しよう!