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助けを求めるようにマロンを見ると食い入るように天木千歳の手元を見ていてわたしの視線にはまるで気づかない。天才のやることに興味津々か!
「奨学金も貯めなきゃならないし学園祭の作品の生地とかも買うからお金が必要で…っ」
「俺が仕事まわしてやるから心配すんな。おまえ何色が好き?」
「は…は、灰色…」
「灰色な。おっけー」
いやおっけーじゃないし…!
なんて思っていたら、ついに爪がやすりにかけられた。
うそでしょう?本気?超勝手じゃない?ねえ…バイト……。
ジミー女で愛嬌だけが取り柄のわたしは、抵抗力に欠ける。そう痛感した。その後は次々とジェルネイルの準備が自分の爪に施されていくのを、あきらめの気持ちでただただ泣きそうになりながら見つめることしかできなかった。
そしてついに、ジェルが爪にのっかった。
細い筆で、白っぽい灰色が爪全体を染めていく。
「こんなの……似合わないよ」
ぼそりとつぶやいた言葉。
唯一自分に合っていると思ってる灰色でさえ、こんなおしゃれなことに使うと似合わなく思えてくる。
何もない他の指が、みじめ。
でも色づいていく小指も、かなしい。
「俺が似合うようにしてやるよ」
「…なるわけないでしょ」
ジミーちゃんだよ。下の中で、デザインの才能もなくって、何もない。
そんなわたしが変わるなんてそんな奇跡、絶対に起きっこない。
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