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待って、ねえ待って、自分勝手もいいところじゃない!?
「何この色!今すぐ落として!」
「うるせえな。シラけんだよあんたの顔」
「そりゃ地味顔だしっ…て、ちょっとミドリとかぜったい塗らないで!手放してよっ」
勘弁してくれ!灰色でさえ似合わないと思ったのに、こんな派手派手な色…おかしいでしょ!だいたい左右でこんなに雰囲気が違う手、おかしいでしょ!
なんなのこの人…「放すかよ」なんて言って、涼しい顔して振り回してくる。
この数十分でかなり疲れた。もう帰りたい。
「こんな派手なの、もっと似合わないのに…」
明日から手袋しよう。もうすぐ夏だけどこれを人に見られるよりずっといい。汗だくになってもいい。こんな恥ずかしいもの見せられない。
バイトできないどころか、そんな生活を強いられることになるなんて。
もう勝手に落としにいこうかなあ。それがいい。うん。はあ。20年間の人生で今日が一番サイアクな日だ。
けっきょく、それ以上何も言えないまま、左の手は指先は5色のビビッドカラーで染められた。
「なんだよその目は」
「一生呪ってやる…」
お金払ってでもオフしに行く。今日行く。バイトもやめない。
「シラける」
「さっきからなんなの…?」
「さっきからなんなの、はおまえの方だろ。何が似合わねえだよ。なんつう顔して生きてんだよ」
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