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天木千歳は天才であることで有名だけど、ほかにも、イケメンだとか声がいいとか性格なんて二の次で目の保養にはもってこいだとか、そういうふうにも言われてる。
そんな人と関わってしまったのが地味顔の目立たない女だったからか、予想通り、学校中大騒ぎになっていた。
一番すごかったのが、あの天木千歳直々にモデルを依頼したのが何の取り柄もなさそうなブスだったって話題。当の本人であるわたしが近くにいることにも気づかずに、うらやましそうに言っている女の子たちの輪の横をこそこそと抜ける。
自分の教室までが遠い。
でも自分の教室が安全だって保障もない。
きっとクラスみんなこの話題で持ち切りだと思う。ジミーちゃんがなんでって。ジミーのくせにって、思ってるかもしれない。
行きたくないなあ。
やっぱり何が何でも断ればよかったのかな。それはそれで反感をくらいそうだ。
意を決して教室のドアを開ける。
「お、おはよう」
クラスメイトの目が一斉にこっちを向いた。背中がひんやりとする。
ブスのくせに─── って、みんな、思ってるよね。さっきの人たちも言ってた。何より自分が一番そう思ってるんだ。シラけるとか、そんなの世間を納得させる理由にならない。
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