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帰り支度って言ってもデザイン画とえんぴつをバッグに入れるくらいだ。
でもまだ残ってる生徒だってたくさんいるだろうし、そんな中でこの人と歩いたらいっそう好機な目で見られることになる。
「なに迷ってんの!ほら支度したから早く行きな!」
「え、ちょっとキョーカ…っ」
なに勝手に準備してくれちゃってるの!?
トートバッグを押し付けるように渡される。
「明日は一緒に学園祭の準備しようね。というか、なるべく早くモデルのほうとの両立に慣れたほうがいいよ。手先は器用でも性格はとっても不器用なんだからさ」
にこりと笑みを向けられる。渋々バッグを受け取ると背中を押されて天木千歳の近くまで勢いまかせに足が進んだ。
ちらりと振り向くと「ジミーちゃん。自分の好きなもの、取り戻しておいで」って言われた。そして手を振られる。
胸のなかにじんわりと広がる友達のやさしさ。
ジミーちゃんって本当にただの愛称だったんだなって思った。
「…また明日ね、キョーカ」
「うん。じゃあ天才さま、うちの子をよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるから、ちょっとはずかしい。
自分の好きなもの。
もうわすれちゃった気がする。どこかに置いてきたまま。
「おー。さんきゅ」
何がさんきゅ、なんだろう。
わからないけど、天木千歳はキョーカにそう言って、それからわたしの腕を引いて歩き始めた。
…やっぱり強引だな!
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