collect 1.爪先にハイイロカラフル

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才能もない。顔も可愛くない。体型はよくわかんないけどお腹にお肉は付いてるし背は低い。 格好は地味なのしか似合わないし、みんなからジミーちゃんって呼ばれて愛嬌があるからカワイイなんて言ってもらえるだけで「うん、これでいいかな」なんて満足しちゃうそんな人生だ。 就職は、デザインの仕事を考えていない。これからも「趣味はミシンです」くらい答えられたらそれでいいかなって思ってる。 だって、みんなが作るものはいつだってすごい。 自分とは全く違う。カラフルなもの、モノクロなもの、お花やボーダーやアニマル柄。自分が思い描く理想をかたちにするチカラをみんな持ってる。わたしにはまるでないチカラを。 うらやましい。だけど、うらやましがるくらいが自分にはちょうどいい。 だって、何もないから。 わたしは何もない、つまんない人生。 「なあ、あんた」 校舎を歩いてると、ふいに低い声がした。 静かな放課後。横を見ると、さっき話題にしていた天才が立っていた。 ああ、じゃあ話しかけてるのはわたしに対してじゃないな。そう思ってまた歩き出そうとすれば腕を掴まれて引っ張られる。 「わっ、な、」 何が起こっているのかわからない。 普通に、ぼんやりと歩いていただけ。なのになんでか今まで一回も話したことも関わる機会もなかったあの天木千歳に腕を引っ張られている。
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