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目覚めた朝
身体のあちこちが痛い、寝返りを打つたびにどこかしらが痛んだ。
目が覚めるとそばに居たはずの蒼志は消えていた。
昨夜の優しさが嘘のように思えて、寂しさで胸がギュッと縮んだ。
布団から起き上がると、テーブルに紙が置いてあった。
綺麗な字が並んでいた。
(嵐、仕事があるから行ってくる)
だったそれだけが嬉しかった。
冷蔵庫を開けるとサンドイッチや牛乳、プリン、ケーキ、ソーセージにコロッケ、チキンナゲット、今直ぐ食べられそうな物がいっぱい入っていた。
寝てる間にコンビニで買って来たやつだった。
どこまでも優しくて気のつく奴だろう。
俺なんかにどうしてそこまでするの・・・・・親が再婚しただけの兄弟なのに。
それもたったの一年だったのに・・・・・
6歳の俺にキスしたから?
今でも好きなの?
今の俺は何?弟?もと弟?
俺が蒼志を好きになったらどうするの?
それは困るんだよね?
蒼志は俺のなに?
好きになりそうな気持ちを必死で引き戻す。
とっくに好きになってることに気づかないふりをした。
一日休んで仕事に行った、やっぱりここは落ち着く場所だ。
緩やかなジャズの音色に思考も身体も癒される、これまで通り心に蓋をして生きていけばいい。
誰にも近寄らず、誰にも近づかせず悩むことも考えることも無く生きて来た。
仕事が終われば家に帰り、ただ俺だけを待つあらしと共に食べて寝て起きて、穏やかで平和な毎日を過ごす。
たまに蒼志の相手をして、たまに蒼志が泊まって、たまに蒼志の優しさに触れる。
そんな毎日が理想だ。
浅くもなく深くもない関係が切れることなく続けばいい・・・・・
蒼志の顔を思い浮かべた、6歳の俺と17歳の蒼志・・・・・21歳の俺と32歳の蒼志。
いつも俺より大人の蒼志が居た。
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