どっち?

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どっち?

兄弟が良かったのか、兄弟じゃない方が良かったのか? 蒼志のことを好きだと気がついて、蒼志も同じ好きだと言われても、直ぐに「はいそうですか」とは喜べない。 母さんから学んだ、好きになって、愛し合って、それもそのうち終わる。 終わって別れて、離れ離れの他人になって、また他の誰かを好きになる。 俺はそんな風にはなれない、好きになったらずっと側にいたい。 別れたくない、他の人に乗り換えるのも嫌だ。 蒼志がどんな気持ちで好きだと言ってるのか、ずっと探してたと言っても言葉だけでは気持ちは推し量れない。 それからも、時間ができると店に顔を出した。 仕事が終わるとアパートまで送ってくれる。 最近は泊まるとも言わずにタクシーで帰って行く。 そんな風にされると、途端に寂しくて「泊めてくれ」そう言って欲しくなった。 送られることに慣れ、店の外に蒼志がいるのが当たり前だと思うようになっていた。 今夜もいつも通り店の外で周囲を見回す。 店に顔を出さなくても外に居ると思い込んでいた。 だが、何処にも蒼志は居なかった。 来ると言われたわけではないから、居なくても当然なのにがっかりとしている自分が情けなかった。 電話もメールも聞いたことがなく、連絡を取り合おうと思った事すらなかった。 蒼志が店に来るから逢え、来なければ逢えない、来ない理由も来れない理由も聞かされていない。 このまま来なければ、それで終わる関係でしかなかった。 それから、一週間経っても蒼志は来なかった。 休日をダラダラ過ごし、昼過ぎシャワーを浴びた。 蒼志が来なくなって10日、指を折って数えたわけじゃないがやっぱり気になって部屋のカレンダーの日付を確認してしまう。 見ていないTVがニュースを伝えてきた「地検特捜部が消えた15億円を発見。天井裏の物置部屋から段ボール3箱が見つかりました。すべて任意提出してもらい、ひとまず地検の宿直室に運び入れました。」 映し出される特捜部が追い続けた真相の文字「特捜部はようやく不正蓄財の「たまり」に辿り着いた」、蒼志が忙しかった理由が分かった。 分かったからと言って、何の感慨もない。 好きだと言いながら相手の情報は何も知らされず、ネットやTVで知ることの虚しさ。 事件の内容など知りたい訳じゃない、せめて仕事が忙しいくらいの言い訳が欲しかった。 いつ来るかもわからず待たされるのは嫌だった。 自分の気持ちは曖昧のまま蒼志の事だけを責める自分に気づき、蒼志への恋慕が募った。 蒼志に逢いたくても、逢う手段が分からない。 店で待つしかない関係がもどかしく、そんな状態に腹が立った。
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