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とにかく、全く彼女の事情が分からないまま、僕らの関係は変容どころか、突然消滅してしまった。
このような終わり方をしたため、ピリオドの打たれていない出来事として、彼女とのことは僕の胸の中で碇をなくした船のようにさまよい漂い続けることとなった。
僕は今も当時も、たとえば死病を患ったパートナーがいたらきちんと添い遂げたいと願う方だ。
僕と出会ってくれたこと、僕と共にいてくれたことに、最後の最後まで「ありがとう」を伝え続けたい。
マユについては、そうすることが許されなかったことで、僕は自分の最後まで彼女のことを背負ったまま、歩み続けなければならないようである。
それが彼女にたいする愛情であるならば、事あるごとに蘇る彼女と過ごした約三ヶ月間の記憶を、むしろ僕は守りたいと思う。
だから、まだサヨナラは言わないでいたい。
(了)
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