私から妻へ

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私から妻へ

六通目が妻からの最後の手紙となった。 まともに書けない手で書いたと思う文字は歪んでいてそれでも彼女は書いてくれた最後の手紙。 私はあれから誰とも再婚をしていない。 ただ、彼女以外に愛する女性がいなかったからだ。 この手紙を最後に妻は息子を産むまで植物人間となった。 全身の繋がった管が痛々しかった。 そんな妻を見る度に何度も逃げ出したくなったけれど一番辛いはずの妻が頑張っているのに逃げ出す事なんて出来ない。 息子が生まれた数時間後に延命の為の全ての管を外した。 「頑張った」「産んでくれてありがとう」 そんな労いの言葉なんて出てこなかった。 ただ、情けない事に声を出して泣く事しか出来なかった。 ~愛する人へ 御手紙全て読ませて頂きました。 息子はすくすく成長しています。 名前は君の言っていたアランと名付けました。 最近は小等部のお友達とやんちゃして怒られて呼び出されました。 元気があり過ぎるくらいです。 今更かもしれないが、君が毎年送ってくれていた手紙の返事を今度は私が毎年送るよ。 私は···いや、僕は君と出逢えたこと、君と笑い会えた事、君と喧嘩したこと、君と結婚出来たこと、アランが僕達の所に来てくれた事、どれ一つも後悔なんてなかった。 僕を選んでくれてありがとう。 僕と一緒にいてくれてありがとう。 アランを産んでくれてありがとう。 これから先、何年何十年経っても僕は君に愛してると言うよ。 そして、もしまた生まれ変われる事が出来たら 僕は君をさがして 君にまた選ばれる様に努力するよ。 そしたら今度こそ君と······· fin
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