スイートポテトの憂鬱

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「こんなに甘いなんて!まるでスイートポテトみたい!」 キャスターは黄金色に輝く焼き芋を頬張りながら、お茶の間にむけてリポートしていた。 昔の焼き芋といればホクホクしているというイメージであったが最近では色は黄味を増し、粘度と糖度が格段にアップしている。 美味しい焼き芋を食べた時の感想として、「スイートポテトみたい」という表現が使われることも増えた。 焼き芋とスイートポテト、昔は住み分けができていた。 しかし焼き芋はスイートポテトというスイーツに追いついた。 焼いた野菜が、砂糖とバターたっぷりのスイーツと同等の甘味を獲得してしまったのである。 もちろん焼き芋はただ焼けばいいという訳ではない。サツマイモをあらかじめ熟成させる必要がある。 しかしだ。しかしながら熟成は放置しておくだけだ。調理工程は焼くだけ。 それに比べてスイートポテトはどうだろうか。 調べたところ以下のようなレシピが出てきた。 〈作り方〉 1.サツマイモをオーブントースターで約1時間焼く 焼き芋ができてる! スイートポテトは焼き芋を経由している! 昔はそこまで甘くないサツマイモだったため、砂糖やバターで粘度や甘味を足していたのだと思われるが「紅はるか」をはじめとする品種は砂糖やバターを内包していると言っても過言ではないほどのポテンシャルを有している。 スイートポテトの立場が危うくなっている。 甘くなかったサツマイモをスイーツにするために先人が産み出し、長年活躍してきたスイートポテト。その存在が危うい。 動くべきだ。 焼き芋ではなくスイートポテトを食べるべきだ。 そうでなければスイートポテトは消えてしまう。 スイートポテトのデメリットは何だ? それは手間がかかることだ。 茹でて、裏ごしして、牛乳や砂糖と混ぜて、成形して、卵黄を塗って焼かなければならない。 調理工程が多い! しかしこれはメリットと表裏一体である。 手間がかかるのではなく手間暇かかっているのである! そう!スイートポテトをプレゼントにするべきだ! もしあなたがバレンタインデーに好きな人から渡されるとしたら、焼き芋かスイートポテト、どちらを渡されるのが嬉しいだろうか? (好きな人から貰えるならどちらでも嬉しいとかは無しで) 部活の差し入れで焼き芋とスイートポテトどちらを渡されると嬉しいだろうか? (もっと水分があるものがいいとかは無しで) 焼き芋はジャージで スイートポテトはドレスなのだ。 普段使いしやすい焼き芋と 特別な気分になれるスイートポテト... 使い分けして生きていこう。 食欲の秋が始まった今、スイートポテトの運命は我々に託されている。 皆さんもスイートポテトをよろしくお願いいたします。 私はサツマイモご飯が好きなので、甘くないサツマイモを買って米と一緒に炊きます。
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