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ああ、危ないなあ。馬鹿は言った。
「親父!お袋!」
「お前んちの親はここだ。いいから妊娠初期のおっぱい眼鏡を守ってろお前は」
「え?!何で?!」
志保は、驚きの声を上げていた。
「志保おおおおお!この馬鹿に耳を貸すな!」
島原は、狂乱気味で叫んでいた。
「ということは、娘ちゃんのことも?言ってしまったんですか?降魔さん」
「え?!この子、娘?!」
「あああ。雪次?」
「きゃああああああ!初孫は!女の子なのね?!」
降って湧いた志保の受胎で、家族は大騒ぎになっていた。
「やかましいいいいいいい!勘解由小路!さっさと気色の悪い神を滅ぼしてこい!」
うるさいなあもうこいつは。三田村さんに支えられて、馬鹿は身を起こしていた。
「まあとりあえず、移動したんで平気だが、石の隙間から、デロデロが来るな?よし、三田村さん、行こう。面を外せ。シャックス」
恭しく面を外した三田村さんから、異様な霊気が漏れていた。
「ええ、ええ。参りましょう。ご主人様」
前に、小鳥遊山椒の事件の時に、見たことがあった。三田村氏の本性、シャックスの姿を。
「うん、じゃあ、巣から外に追い出してやろう」
勘解由小路が消え、一瞬で、洞窟の外に、虫とも魚ともつかない、異様な悲鳴のような声が轟いていた。
「よし、全員外に出るぞ?」
え?気持ちの整理もつかないまま、島原達も外に放り出されていた。
外では、何というか、巨大すぎる、黒いイソギンチャクのようなものが、すすり泣いて、苦しんでいるようだった。
「な?これが不具神たる所以だ。外の環境では、こいつは生きられんのだ」
「こんな、こんな生き物の所為で、曽祖父が」
島原は、強い怒りを覚えていた。
「とどめを刺すか?それならな?こうしてみろ。そして、怒れ」
先達が、掌を前に突き出した。島原も倣う。
肉親を失い、哀れな郷里の人間達も、みんな死んでいった。
「お前は、お前だけは許さん!」
島原の怒りを、勘解由小路は上手く誘導し、その力を、一点に収束させ、解き放つ手伝いをしていた。
月夜の海に、眩い雷光が走った。
雷光が、ヒルコを、汚れた神父諸共、貫き滅ぼしていった。
「天罰覿面。だな?」
「お前にも、落ちればよかったのにな」
「なあ島原、ここ、ベテシメシだったろ?」
ああやっぱり、こいつは。見えていたのか。こうなることを。
闇夜に、無事、事態は収拾した。
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