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学校見学
翌日、島原からの連絡はなく、勘解由小路は、狐魂堂愛児園を訪れていた。
トキが見出した、霊力のある孤児達を集めた孤児院。入口前に立つと、あれ?何でいるんだこいつは?
テンテンテンと弾む、ボールを取りに来た女児を見かけた。
のちに百鬼姫って呼ばれるガキかあ。
今、7歳くらいかあ。まあ、皇女なんだろうなあこいつは。
早くも、勘解由小路はこの女児を洞察していた。
「あ?おじさん、いらっしゃい」
「おお、鵺春は?」
「会社」
「じゃあ、水仙と牡丹は?」
「だから会社だって。みんながみんな、あんたみたいに仕事サボってないのよ。私?年下のガキの面倒見ながら、夏休みの自由研究、頭の中で推敲してんのよおっさん。「捏造の南京 払底した朝日」ってタイトルでね?行くわよ静也!取ってこおおい!」
小1で南京話題に出すなよ。まあ朝日新聞が赤匪なのも今更だし。
連中の世界じゃ、毒ガスはモクモクと空中に舞い上がるように出来てるっぽいし。死ぬのはカラスだけで。
毒ガスの比重が空気より軽いってことは、連中の脳味噌もきっと、空気より軽いんだろうし。
ただ、皇女がそれやったら、社会問題になるだろうに。
ボールをフルスイングして消えた女児に、何とも言えない気持ちを抱えていた。
なるほどなあ。未来の打伏山の神官候補達か。
殆ど寺院のような霊気に満ちた伽藍の中を、1人杖を突きながら、勘解由小路は進んでいった。
「お帰りなさいませ。坊ちゃま」
トキと、式神達の歓待を受けていた。
「とりあえずあれだな。1番の収穫は鵺春なんだな?それと、さっきの小生意気なガキな?」
いかさま。トキは応えた。
「他にもおりますよ?先だって、坊ちゃまがお助けした子供も」
「ああ。何日か前の、あの風獣憑きのガキか。それと、トキ、飛行機は?」
「羽田のドックにございます。すぐにでも飛び立てるかと」
「ああ、さっき島原から出発は今日の午後って連絡が来た。それに乗って行ってくる」
「お気をつけくださいませ。島原様は、時代によっては、天の頂点にお立ちになる方ゆえ。坊ちゃまに比肩し得うる器にて」
「あああ。そうかもな?ネタバレがこれ以上酷くならない内に、さっさと出るか。車に、諫早がいるんだ♡ああ俺だ♡これから戻るぞ♡続きはゆっくりしよう♡」
ギリ。ギリリ。トキの歯ぎしりが聞こえた。
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