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島原の実家は、海沿いに建つ、元網元の家だった。大きな、文化的価値の高い門構えが、一同を出迎えた。
出迎えた親戚達は、諫早君の大きくなったお腹に、驚きを隠せなかった。
それが客だとわかり、ホッとしたのもつかの間、その言動に大いに戸惑っていた。
例えば、臨月間近の嫁が、夫を抱え上げ、肩に担いで奥に引き込んだ辺りで、混乱の極致に達した。
バジリコックの本領発揮だが、本来労られるはずの妊婦が、おっさんを肩に担いでいるのだから、それはまあ驚いただろう。
「そんな訳で、あとはまあよろしくな?ジジイを殺したのはあれだ、出島の払底芋掘り百姓の生き残りか何かだ。あとはお前が好きに捕まえてろよ。俺は、火の点いた諫早の相手で忙しいんだ。動機?あああれだ。お前んちの伝統的なオラショを、フリースタイル風なヒップホップ調に改変したのが許せなかったんだYO。犯人は浦上天主堂の爆破を狙っている。隠れキリシタンを、世界遺産からハブった腹いせだな。あいつ等ギャングスタラップみたいな連中だから気を付けろ。車から降りたところで撃たれたりする。眼鏡女も守ってやるから心配しないで散ってこい。じゃあな。俺はこれから、諫早のヴィア・ドロローサを掘り進めに入る。諫早のマリアはマグダラ並みになっちゃってて大変なんだ。アガペーが跳ね上がるまで7,8回は頑張る。芋掘れYO。芋掘れ掘れYO芋掘れYO。ハラショーイエア。バイバイ」
馬鹿はバイバイして奥に消えた。
どこまでおちょくれば気が済むのだうちを。
しかも犯人は、2パックのようなギャングスタラッパーだと?
出島。長崎にかつてあった商業特区。鎖国時代に異人が出歩けた、日本で唯一の場所だった。立地は、埋め立てられた人工島で、畑など出島にはなくて。つまり、
「出島に百姓がいて堪るか馬鹿がああああああああああああ!!」
島原は渾身の雷を落とし、親戚達は本気でビビっていたという。
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