13人が本棚に入れています
本棚に追加
「オレらも行こっか」
「うん」
同じ電車に揺られて航希と乃亜は帰宅した。ちょうど運よく空いた二人分のスペースを航希は奪うように座った。
「乃亜はさ」
航希はスマホをいじりながら話す。
「オレが学校でバンドメンバー募集してたの知らなかったの?」
「知ってたよ。校内の掲示板とかに貼ってあったし」
「じゃあ、なんでドラムやろうと思ってくれなかったんだよ」
「だって、受験に専念しようって決めてたから」
「そっか。まぁでも、やってくれてサンキュな」
「あんなに頭下げれたら……ね。」
乃亜は苦笑いをした。
「オレそんな頼みこんだっけ」
航希は後頭部をかいた。
「ほんとに忘れっぽいよね」笑う乃亜の口には歯科矯正の器具が光っていた。
「でもね、誰かと思い出を作るって素敵なことだなって思ったの」
「ほうほう」
「家にいるだけじゃ思い出は作れないしね」
「うんうん」
航希はテキトーに相づちをうちながら、ピアたんにDMを送っていた。
「それに何よりさ」
乃亜の気配が変わった。
「元カレの頼みだしね」
航希はスマホを触る手をとめた。
最初のコメントを投稿しよう!