13人が本棚に入れています
本棚に追加
【4】
何度連絡しても、乃亜につながなかった。
乃亜の友達である吹奏楽部の女子たちに聞いても、彼女たちもまた何も連絡がつかないという。
「くそーーー! どうすんだよ」
航希は壁を蹴った。
体育館のステージ脇の待機所、航希と燈矢は焦りに焦っていた。
すでにステージ衣装に着替えている。
ステージの上には、マイクスタンド、ギター、アンプセット、ドラムセットとすべて用意されている。
体育館は満員に近い生徒たちのオーディエンスがすでにその時を待っている。
テレビ局の本格的なカメラは設置されていて、取材班との打ち合わせもすましている。
舞台は整っているのに……
時刻は、1時25分。スタンバイの時間だ。
「どうしよう、航希」
燈矢の声はいまにも泣きそうだった。
「しょうがない。ドラムなしでやろう」
「そんなの無理だろ」
「やるしかないだろ。いくぞ」
航希は覚悟を決めた。唇を結んでステージへの小階段に足をかけた。
そのときだった。
すべての照明が落ちた。
暗闇の中、観客の生徒たちは期待の声を響かせる。
ライブ直前の独特の空気が体育を包む。
おかしい。航希は違和感を覚えた。ステージの照明すら点いていないのだ。これではセッティングが難しい。
調整室にいる係のミスだろうか。
さらにステージの壁には巨大なスクリーンが下りてきた。こんな演出聞いていない。
とまどっていた航希は、スクリーンに映し出された映像を見てさらにパニックになる。
最初のコメントを投稿しよう!