罪のきおく

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「てめえ、ふざけんなよ」 ゆっくりと調整室の中へ足を踏み入れた。 「食べ物にツバを吐きかけるような人にいわれたくないわ」 乃亜は冷酷な表情をしている。 「あの動画、おまえが撮影したのかよ」 「そうよ。あの日、わたしもあの店にいたのよ。この辺りの学生なんてだいたいあの店行くでしょ」 「オレになんか恨みでもあんのかよ」 「恨みもないのに、こんなことしないでしょ。ふつう」 「オレがおまえに何かしたかよ」 「飯田さん、ずっと前から好きでした。ぼくと付き合ってください。このセリフ覚えてない?」 航希はハッとした。それは中学1年生の冬のだった。 「学年で一番の人気者のあなたに告白されてわたしは舞い上がったわ。イケメンの彼氏ができたと思って本当にうれしかった。けど、ちがった」 乃亜はメガネをはずした。 「それはあんたら男子グループの罰ゲームだった。あんたに騙されたのよ、わたし」 突き刺す視線に航希は固まった。 「それをあとから知って傷ついたわ。本気で好きになっちゃったから、もう死のうかなって思うくらいね」 「悪かったよ」 「女をなんだと思ってんのよ」 「……」 「しかも、あなたはそれがゲームだったとは教えてくれなかった。教えてくれたのは別の男子からだったの。 わたし、ずっとあなたと付き合っていると勘違いしてた。あーあ、純粋だったな」 航希は下を向く。嫌な汗が額からあふれでてくる。
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