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「いつかあんたみたいなクソ男には天罰がくだればいいって願ってた。ふふ。その願いが通じたのかな。あの店であんたらの行動を見かけたとき、すぐに計画を思いついたの。今日をゴールにして、どうすれば一番あなたが傷つくかなって考えると楽しくてしょうがなかった」
ニヤリと笑う口に歯科矯正の器具が不気味に光る。
「あなたはもう終わりね。デジタルタトゥー。一生この動画がこの世界から消えることはないわ」
「そ、そんな」
航希は崩れ落ちた。だらしなく落ちたよだれが床に付着した。
「そういえば、ピアニストのお友達は来ていないようね」
「……え?」
顔をあげると、乃亜はボタンに手をかけて制服を脱いでいく。
やがてピンク色のタンクトップ姿になった。
白い素肌の二の腕には、縦に並んだ特徴的なホクロがある。
「でも、もうすぐ来るかなぁ」
淡々と語りながら、乃亜はカバンからなにかを取り出し、それを頭に装着した。
それはピンク色のヘアウィッグだった。
航希の唇がわななく。
その姿は、まさしくピアたんだった。
そうか、乃亜は音楽一家でどんな楽器もできるのだった。
「あぁ……あぁ」
航希は尻もちをついた。声が情けないほどにうわずってしまう。
「そそ、そんな……」
乃亜はビー玉のような目を航希に向ける。
「ねぇ、航希くん。女に騙されるってどんな気持ち?」
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