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スタジオでの練習が終わったのは夜の9時45分だった。
見上げた夜空には薄い三日月が泳いでいた。
ロールパンのようなまるい雲は自由気ままにゆっくりと流れている。
3時間の練習があっという間に感じた。やはり安定したドラムがいると、バンドは強い。
正直なところ、前メンバーの斗夢よりもはるかに技術が高い。
最初は、「女子がドラムかよ」と文句をいっていた燈矢もすぐに乃亜の演奏力を認めた。
さすが音楽一家に生まれた人間はセンスがちがう。
「じゃあな、航希。乃亜ちゃん」
駅に着いたところで、燈矢と別れた。彼は反対方面の電車だ。首の長いベースのソフトケースを肩で背負う燈矢が手を振った。
「文化祭成功させような」
航希が声を張っていうと、燈矢は親指を立てて階段を上がっていった。
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