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バス停の手前、道の向こうからこちらに来る幼馴染の悟も、一歩一歩、新雪を踏み締めて歩いていた。
「悟、おはよ」
「あぁ琴音、おはよ」
鼻の頭と頬を赤くした悟は、ニッコリ笑顔で挨拶をくれた。そして「雪、積もったな」と、嬉しそう。
気温はすごく低くて寒いはずなのに、いつもと変わらない悟の笑顔に、私は胸がじんわり温かい。
「根雪になるかな?」
「どうかなー…」
「そういえば昔、動物の足跡追いかけたり、カマクラ作ったりしたよね…」
「だな」
私達はたわいもない話をしながら、バスを待つ。しかし、十分以上経ってもバスは現れない。
「それにしてもバス、遅くね?」
「雪のせい?」
「このままじゃ俺ら遅刻じゃね?」
「本当だ…」
朝寝坊のせいで遅刻ギリギリのバスになってしまったというのに、そのバスが遅れてるのだから、間違いなく遅刻決定だ。
「悟、今日どうした?遅いね」
「目覚まし止めて二度寝してた」
「布団、気持ちいいもんね…」
「琴音は二度寝、三度寝の常習犯だろ?春先から乗ってたバス夏休み明けてからは乗り遅れてばっかりだもんな」
「だって、起きれないんだもーん」
高校入学当初は同じバスでよく一緒に行っていた。だが、私が朝起きれなくなって、クラスも違うので、こんな風に悟とゆっくり話すのは実に久々で胸が躍る。
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