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朝目覚めると、吸い込む空気に冷たさを感じた。
顔が寒い。顔を布団にもぐらせて鼻の頭をさすると、鼻の頭はひんやりと冷たかった。
今朝はずいぶんと冷え込んだな。
布団、出たくないな。
そんな風に思ってごろりと寝返りを打つと、また瞼が重たくなって微睡んだ。
「琴音あんた、いつまで寝てんの。遅刻するよ!」
ママが、一階の階段の登り口から二階の私の部屋に向かって叫ぶ。それでも起きてこない私に、ママの五分おきのスヌーズ機能が発動し、どうにか遅刻はまぬがれそうだ。
「あ、時間ヤバ!行ってきます!」
家の戸を勢いよく開けると、視界に飛び込んできたのは白銀の世界だった。
空気がピンと張り詰めていて、東の空から登ったばかりのオレンジ色の朝日を受けて、白銀の絨毯はところどころキラキラと煌めいている。
「おぉ!雪だぁ…こりゃ、どうりで冷えるわけだ。」
感嘆の声を漏らすと、白い息がもわもわんと現れて消えた。
ローファーじゃダメだと、慌ててブーツに履き替えて、私は弾む足取りで新雪を踏みしめる。まっさらな雪につける自分の足跡。何歳になってもシーズン最初のそれは、私の心を踊らせる。
無駄にくねくね歩いてみたり、すり足で道を作ってみたり、私はバス停までの道のりを子供のように楽しんだ。
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