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「きっと、お、お給料とか、もしかしたら昇進するお話なのよ……。そうよ、きっと、きっとそうよ。短大の先生にだって……ほら、あの子は愛嬌があるでしょ?あんたと違って、すごく気に入られて、その紹介で入社させてくださったんだから、大丈夫よ。きっと、きっと会社でもあんたと違ってすごく人気者なのよ。朱莉みたいな、根暗と違うんだから!」
根暗と決めつけられて、さらに落胆した私をフォローするべく、ぴしゃりと父が言い放ってくれたのが嬉しかった。
「朱莉は根暗じゃないだろ、しっかりしているだけだ。朱音はだらしない、お前とそっくりで」
そう言われて、母はますます不機嫌に、クッションを叩いていた。
だらしないじゃないか、実際。
部屋も汚いし、モノがなくなれば「朱莉が盗んだ、返せ!」と部屋に怒鳴り込んでくるぐらいだから、尋常じゃないんだよ。
見つかると母は「朱莉みたいにせせこましくないから、やってもらうことに慣れているだけよぉ」なんてかなりズレた、お花畑すぎることを言って、あいつを甘やかして終える。
さらに「よいしょよいしょ」と肥えた身体を動かして雑な掃除をし、パンパンにつまったゴミ袋を私の部屋へ投げ込む。
集積所へ出すのはいつも私だ。朱音はやらない。
格好悪いからと、絶対にやらない。
あんなやつが、職場で備品やパソコンをきれいに使う姿なんか、かけらほども想像できない。
しかし正直なところ、家族以外の相手に対して、朱音がどういう態度で接しているかは私にとって興味をそそられる部分でしかない。
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