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ああもう、憎らしいたらありゃしないわ。
昨日からヒドイ雨でしょう、ねえ?
湿気と、わたくしが吐き出す嫌なモノに誘われたんでしょうねえ、いつもよりたくさん「生えて」きやがって、まったく、ほとほと参りました。
でもねえ、不満なんかこぼしちゃいられない。
搾り取るばかりで、指一本動かしたことのないまま生きてきたわたくしには、苦しいことなんですがね。
食っていくためには、そんなことも言っていられないんですよ。
ここを追い出されたらそれこそ……どこにも、行くところがないんですから。
ああ、実家に戻れたら、どれほどありがたいでしょうね。
今でも、わがままで好き放題していたわたくしに合わせてくれた、優しい家族を思い出すと、ずるずる涙が出てしまいますよ。
わたくしが息をするように、考えなしで吐き出した嘘もアッサリ信じてくれた、おめでたい顔は今でも、思い出すんです。
とりわけ寂しい夜には、余計にねえ。
ひとりでぎゅっと目をつぶって、薄い布団のなかで身を縮ませて眠るんです。 そうするしか、ないんですから。
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